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WARMOON LORD Review

目次

  1. Burning Banners Of The Funereal War
  2. Pure Cold Impurity
  3. Battlespells

Burning Banners Of The Funereal War

WARMOON LORD - Burning Banners Of The Funereal War
  1. The Tragic Moon
  2. Obsessing Darkness
  3. In a Rotting Memories Grave
  4. Funereal Blood
  5. Blazing Warrior Soul
  6. ...and the Black Crows Ate Their Lifeless Bodies

フィンランドのブラックメタルバンド Warmoon Lord の1st『Burning Banners of the Funereal War』。筆者が購入したのは500枚限定のデジパックCD盤。

フィンランドらしい薄らメロディックなリフを基調に巧みなキーボードで曲を彩るシンフォニック・ブラックメタル。これは素晴らしい!音質良し、曲良し、演奏良し。2019年のベスト・ブラックメタルアルバム候補の1枚。

Lord Vechi Vrajitor(Juuso Peltola)なる人物が全て1人でこなしている。Warmoon Lord 以外にも電子音楽やドゥーム/メタルバンドをやっていて多才な人物のようだ。

最初と最後がインストで実質4曲、トータル30分ちょっと。ジャケットから Mayhem『De Mysteriis Dom Sathanas』‎を連想したが然に非ず。小曲 #1. "The Tragic Moon" の後の #2. "Obsessing Darkness" の出だしがモロに Darkthrone だったので「そっちか!」と思ってたら、Darkthrone は最初だけでその後はいかにもフィニッシュ・ブラックメタルといった趣に展開していく。やはりお国柄は隠せないということか。

爆走する轟音の中に扇情的なメロディを塗してダイナミックに展開する様が『Let The Devil In』の頃の Sargeist っぽい。Sargeist 程に哀愁は感じないがシンフォニックアレンジが巧みで時に Emperor 風、時に Nokturnal Mortum 風、フランスのブラックメタルバンド風だったりと多彩。ブラックメタル4曲はいずれも6~7分あるが退屈さとは全く無縁。

正直このバンドならではという所は無いが、各種ブラックメタルを良いとこ採りして上手い事まとめたなぁという印象。音質が淡々としているというか無機質な感じなのは別でやってる電子音楽の影響だろうか。色々やっている人なのでこれ1枚で終わってしまわないか心配。次作も是非作って欲しい。

Pure Cold Impurity

WARMOON LORD - Pure Cold Impurity
  1. Ancient Death's Crown
  2. Victory of Irreverend Might
  3. Magie et Sang
  4. The Morningstar's Descent

フィンランドのブラックメタルバンド Warmoon Lord『Pure Cold Impurity』をレビュー。2020年リリース。同郷の Vultyrium とのスプリット音源だが筆者は Bandcamp から Warmoon Lord の曲のみ購入。

まずは新作が出た事を喜びたい。前作『Burning Banners Of The Funereal War』が素晴らしく2019年ベストの1つとまで書いたが今作も劣らぬ内容で嬉しい限り。

前作から作風が若干変化。より激烈度を増したシンフォニック・ブラックスタイルになった。音質が前作のように洗練されておらずかなり荒々しい。ノイズを撒き散らしながら激しく疾走する部分が多く、シンセを曲の主役にした勇壮なシンフォニック・ブラックメタルに焦点を置いたという印象を受けた。元々各国ブラックメタルのハイブリッド感があったがフィンランド産らしさは更に薄まった気がする。

メロウなリフも其処彼処で聴けるが全体的に初期の Nokturnal Mortum や Emperor などのシンフォニック・ブラック勢を連想させる。特に #1. "Ancient Death's Crown" と #2. "Victory of Irreverend Might" の激しくも荘厳かつ勇壮な雰囲気を演出するシンセの使い方が素晴らしい。

2分の小曲インスト #3. "Magie et Sang" はプリミティブ・ブラックメタルでスタートして後半に荘厳なパートへ移行するところが高揚感を掻き立てる。ブラックメタルパートが初期の Burzum みたいなリフでニヤっとさせられるところも素敵。

相変わらずの「お前、どこの子だ?」感で前作でファンになった方を失望させることはないと思う。個人的には前作より今作の路線が好み。近年の新バンドの中でも曲の良さは傑出している。4曲のみだが濃厚で大満足。新作を待ってていいんだよね?

Battlespells

WARMOON LORD - Battlespells
  1. Virtus Tenebris
  2. Purging Nefarious Vortex
  3. Of a Moribund Vision
  4. The Key of the Moonpiercer
  5. Empowered with Battlespells
  6. Oracles of War
  7. In Perennial Twilight

フィンランドのブラックメタルバンド Warmoon Lord の 2nd『Battlespells』をレビュー。2021年リリース。

相当聴き易くなったなという印象。Split『Pure Cold Impurity』と同路線の交戦的な作風ながら音質も曲調もより洗練された。1st『Burning Banners Of The Funereal War』期のマニアックさは皆無。初期の Emperor を偲ぶ向きには是非ともおすすめしたい極上のシンフォニック・ブラックメタル作品。

シンフォニックな装飾が派手になって一層 Emperor を想起させるようになった。中世風、ペイガンメタル風な部分も増加。初めて #4. "The Key of the Moonpiercer" を聴いた時 Graveland みたいだと思ったが、本当に Rob Darken がゲスト参加しているのを後で知った。

個性は元々なかったがアクが抜けたというか 1st にあった悪の華な感じが消えた。ブラックメタル見習いでも挑めるくらいに敷居を下げた真っ当なシンフォニック・ブラックメタル。

キャッチーで壮大な世界観。従来通りのメロディとそれを飾り立てるシンフォニックアレンジは古典的ながら素晴らしい出来。2作続けてやってくれた!