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KAATAYRA Review

目次

  1. No Ruidar Da Mata Que Mirra
  2. Nascido Sob O Signo Incivilizatório
  3. Só Quem Viu O Relâmpago à Sua Direita Sabe

No Ruidar Da Mata Que Mirra

KAATAYRA - No Ruidar Da Mata Que Mirra
  1. Há Mais do que Refúgio em Mar Profundo
  2. Das Serras, Sapiência e Sumidade
  3. Clarividência em Xara
  4. Saudades Florescem
  5. Valhacouto de Lírios
  6. Contra o Delírio Urbano, um Manipanso

ブラジルのブラックメタルバンド Kaatayra の 1st『No Ruidar da Mata que Mirra』をレビュー。2019年リリース。

1人ブラックメタルバンドの 1st フルアルバム。曲タイトル、歌詞はポルトガル語。全6曲トータル71分。全曲10分越えの大作揃いの作品。

音楽性はメロディック・ブラックメタルを基調としてキーボードやアコースティックギターやお経のようなボーカル、はてはダンスビートまで突っ込んでごった煮にした何でもアリな作品。1人だからって好き勝手したなぁ〜という印象。

どの曲も非常にドラマティック。ブラックメタルリフの上をもう一方のギターが動きの激しいギターワークを駆使して曲を彩る。曲展開は相当に忙しい。

フォークロアかと思えば混沌とした雰囲気になったり、ペイガン調の大仰なリフ展開だったのが民族打楽器とアコギの静寂なパートになっていたり、アコースティックで静かに歌っていたら背後から爆走ブラックメタルが入ってくるドッキリネタみたいな展開があったりと頻繁に場面が変わってどこに意識を置いて聴けば良いのか悩む。

曲の進行パターンはほぼ同じで、アコギやアンビエント風に静かに曲が開始→爆走ブラックメタルに移行→中間部でスピードダウンして雰囲気物に→段々と激しく→爆走ブラックメタルに戻る、とこんな感じ。

最後の#6. "Contra o Delírio Urbano, um Manipanso" は上のパターンに当て嵌まらないダンスビートとブラックメタルが交互に現れる奇抜な曲。

ラテンの香りは全くしない。#2. "Das Serras, Sapiência e Sumidade" や #3. "Clarividência em Xara" で聴ける仄かに民俗調のスケールの大きなメロディには郷愁を誘われる。全体的には明瞭としたメロディは多くないしメロディそのものの扇情度は高くない。アトモスフェリックな作風が優っているように感じる。

長くて聴き通すのに忍耐力を必要とする作品であるが個性的で壮大な曲がずらりと並ぶ。内容は悪くない。これを1人で作り上げたというのは凄い才能だと思う。バンドに関する情報が少なくわからないが次作にも期待したい。

Nascido Sob O Signo Incivilizatório

KAATAYRA - Nascido Sob O Signo Incivilizatório
  1. Horizonte Abismo
  2. Fogo! Na Babilônia
  3. Unhas de Bode Ecoam versus o Macaco Nu e sua Agricultura
  4. Chama Pólvora e Esperança
  5. Preciso me Encontrar (Tributo ao Candeia)

ブラジルのブラックメタルバンド Kaatayra の 2nd『Nascido Sob o Signo Incivilizatório』をレビュー。2019年リリース。

前作『No Ruidar Da Mata Que Mirra』からわずか8ヶ月後にリリースされた2ndフルアルバム。10分越えの曲が3曲、内1曲は18分もある。2曲ある4分台の曲が小曲に聴こえてしまう前作同様の壮大な大作アルバム。

作風に変化はない。パートごとの抑揚がついたためか前作よりはわかりやすい曲構成に感じる。爆走部分と静寂部分の対比が前作以上に鮮やか。なんとなく程度に前作よりは聴きやすい気がする。ポスト・ブラックメタル風部分と哀愁のあるメロディが耳に留まる。また、#3. "Unhas de Bode Ecoam versus o Macaco Nu e sua Agricultura" のようなラテンの香りを感じさせる曲は前作には無かったもの。Angra にもこれと似た曲があったような気がする。

忙しなさにゆったりと音に浸っていられないが、部分部分を取り出せば印象的なフレーズも多いなという感想は前作と同じ。これを何度も聴くのはツライ。1st と本作をカップリングした編集盤もリリースしている。逆に無心で楽しめる音が欲しくなる。そうだ、Abigail を聴こうっと!

Só Quem Viu O Relâmpago à Sua Direita Sabe

KAATAYRA - Só Quem Viu O Relâmpago à Sua Direita Sabe
  1. Chama Terra, Chama Chuva
  2. Desnaturação de Si-Mesmo
  3. Só Quem Viu o Relâmpago à Sua Direita Sabe
  4. Bom Retorno (De Volta às Origens)

ブラジルのブラックメタルバンド Kaatayra の 3rd『Só Quem Viu o Relâmpago à Sua Direita Sabe』をレビュー。2020年リリース。

ブラックメタルの範疇を逸脱した3作目。暗い雰囲気だが優雅でこれまで以上にラテン風の哀愁を感じさせるフォークロア的な音楽性に大きく変化。ギターはアコースティックギター、もしくはクラシックギターが中心で歪んだ音が姿を消した。歪んだトレモロギターをクリーンな音で置き換えたような感じ。疾走するドラムとボーカルの唸り声にのみブラックメタルらしさを残す。

ボーカルの唸りも意図的に抑えているような発声法。囁くような声で民族音楽調のメロディを歌い上げる部分が多い。疾走する部分は残るがブラックメタルを求めて聴く作品ではない。内容は前2作より断然良い。前作までのプログレッシブなブラックメタルの面影を残したまま新境地を開拓した秀作。

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  1. No Ruidar Da Mata Que Mirra
  2. Nascido Sob O Signo Incivilizatório
  3. Só Quem Viu O Relâmpago à Sua Direita Sabe