SARGEIST Review
目次
Satanic Black Devotion
![SARGEIST - Satanic Black Devotion](/img/article/sargeist_satanic-black-devotion.jpg)
- Preludium
- Satanic Black Devotion
- Obire Pestis (Suicidal Ruin)
- Frowning, Existing
- Glorification
- Panzergod
- Black Fucking Murder
- Sargeist
- Returning to Misery & Comfort
フィンランドのブラックメタルバンド Sargeist の 1st『Satanic Black Devotion』をレビュー。2003年リリース。
Sargeist は Horna の Shatraug のソロプロジェクトとしてスタート。バンド名は Rotting Christ の曲 "The Old Coffin Spirit" から着想を得てドイツ語で "Sarg" (coffin), "Geist"(spirit)だそうだ(metallum)。本業の Horna 以外にも多数のバンド/プロジェクト活動を抱える Shatraug だが、その中でも最も知名度の高いバンドがこの Sargeist だろう。
Horna がアルバムごとに作風をころころと変えるバンドであるのに対しこちらは一貫してメロディに主眼を置いたブラックメタルをやり続けている。歌詞が英語なのも Horna との違い。Satanic Warmaster と並びフィンランド産ブラックメタルのブランドを確立し最も体現しているバンドの1つ。
本作 1st『Satanic Black Devotion』は Shatraug と Behexen のメンバー(Vo, Dr)で作成されている。Shatraug が4曲目 "Frowning, Existing" でボーカルも担当。ワライカワセミの鳴き声のような嗚咽気味の叫びを聴かせてくれる。
アルバムの大部分がメロディック極まりないリフで埋め尽くされた 1st フルアルバム。プリミティブ・ブラックメタルながら音質は上々。メロディの充実度も相当高い。主張が控えめなインドア派陰性哀愁メロディが正にフィンランド(褒めてるつもり)。フィニッシュ・ブラックメタル王道作品。メロディ派は必聴の1枚。
劇的かつ躍動的な6曲目 "Panzergod" と 9曲目 "Sargeist" は秀逸。
Disciple Of The Heinous Path
![SARGEIST - Disciple Of The Heinous Path](/img/article/sargeist_disciple-of-the-heinous-path.jpg)
- Black Treasures of Melancholy
- Remains of an Unholy Past
- Cursed Blaze of Rituals
- Disciple of the Heinous Path
- Heretic Iron Will
- Echoes from a Morbid Night
フィンランドのブラックメタルバンド Sargeist の 2nd『Disciple Of the Heinous Path』をレビュー。2005年リリース。
曲は前作 1st『Satanic Black Devotion』と同時期に作られたもの(Metallum)。其れ故内容は殆ど前作と同じ。1st アルバムが気に入った方であればこちらも気にいる事だろう。
疾走一辺倒だった前作と比べると "Cursed Blaze of Ritual" や "Disciple of the Heinous Path" などスローな曲がある事が前作との違い。Horna の『ääniä Yössä』風の暗い雰囲気があって疾走メロウブラック作品の中にあって良いアクセントになっている。
Let The Devil In
![SARGEIST - Let The Devil In](/img/article/sargeist_let-the-devil-In.jpg)
- Empire of Suffering
- A Spell to Awaken the Temple
- From the Black Coffin Lair
- Burning Voice of Adoration
- Nocturnal Revelation
- Discovering the Enshrouded Eye
- Let the Devil In
- Sanguine Rituals
- Twilight Breath of Satan
- As Darkness Tears the World Apart
- Moon Growing Colder
フィンランドのブラックメタルバンド Sargeist の 3rd『Let the Devil In』をレビュー。2010年リリース。レビューするのはボーナストラックを1曲追加した Misanthropic Spirit Records からの再発盤(Metallum)。
メロディック・ブラックメタル愛好家にとって至高の1枚になるであろう名盤 3rd フルアルバム。
作風はこれまでと全く変わらないが薄っぺらな音質が改善されて音圧が激増。ボーカルの余計なエコーを排除した事も正解。メロディアス度はそのままに好戦的な押しの強さが噴出した印象。さらにダイナミズムが加わって音のスケールが数段アップした。
メロウさと攻撃性の兼合いが見事でこれこそフィンランド産メロディック・ブラックメタルの理想の型だと思う。
これまで通り疾走曲中心。全編に渡って仄かに哀愁を湛えたブラックメタルをお楽しみいただける。ドゥーミーとも言える #5. "Nocturnal Revelation" やキャッチーなサビを持つタイトルトラック "Let the Devil In" はこれまで無かったタイプの曲。
捨て曲一切なしのフィニッシュ・ブラックメタルの大名盤。Sargeist は今作から聴くことをお勧めする。
The Rebirth Of A Cursed Existence
![SARGEIST - The Rebirth Of A Cursed Existence](/img/article/sargeist_the-rebirth-of-a-cursed-existence.jpg)
- Reaping with Curses and Plague
- The Rebirth of a Cursed Existence
- Sinister Glow of the Funeral Torches
- Wraith Messiah
- Cursed Be the Flesh I Have Spared
- Vorax Obscurum
- Black Unholy Happiness
- The Covenant Rite
- Dead Ravens Memory
- Crimson Wine
- The Dark Embrace
- The Crown of Burning Stars
- The Moon Growing Colder
- Nightmares and Necromancy
フィンランドのブラックメタルバンド Sargeist の『The Rebirth of a Cursed Existence』をレビュー。2013年リリース。
2002年から2011年の期間の Split、EP、Compilation 収録曲とボーナストラックをまとめた編集盤。ジャケットの Shatraug の眼が常軌を逸していて怖い。各曲の出所は Metallum を参照されたし。
14曲1時間12分の大ボリューム作品。こういった散らばった音源をまとめて出してくれるのは凄く有難い。ファンには嬉しい作品。だが、内容としては地味な曲が多く長いので集中して聴き通すのは結構しんどいというのが正直なところ。長期に渡る別々の音源からの曲が並んでいるにも関わらず寄せ集め感がないのはさすがと云うべきだろう。
2011年のEP『Lair of Necromancy』からの2曲 #13. "The Moon Growing Colder" と #14. "Nightmares and Necromancy" が聴き処。"The Moon Growing Colder"は『Let The Devil In』の再発盤にも収録されていた。筆者はやはりこの時期の Sargeist を傾慕する。単調ながらも鬱なメロディがジワジワと沁み込むんでくる #2. "The Rebirth of a Cursed Existence" も良い。
Feeding The Crawling Shadows
![SARGEIST - Feeding The Crawling Shadows](/img/article/sargeist_feeding-the-crawling-shadows.jpg)
- Feeding the Crawling Shadows
- In Charnel Dreams
- Unto the Undead Temple
- Snares of Impurity
- Return of the Rats
- The Unspoken Ones
- The Shunned Angel
- Inside the Demon's Maze
- Kingdom Below
- Funerary Descent
フィンランドのブラックメタルバンド Sargeist の『Feeding the Crawling Shadows』をレビュー。2014年リリースの 4th フルアルバム。
前作と同じ布陣、Horna の Shatraug、Vainaja に Behexen の Hoath Torog、Horns で作成。作風も前作『Let The Devil In』と変わらない。出出しの #1. "Feeding the Crawling Shadows" と #2. "In Charnel Dreams" がやや弱い曲で少し心配になったが #3. "Unto the Undead Temple" がこれぞ Sargeist という名曲で一安心。その後も "らしい" 曲が続く。
前作との大きな違いは音質。ギターが分厚く全体が締まった音像だった前作より纏まりが弱いフワーッとした霧散するような音像に変化している。プリミティブな薄い音ではないが空間系処理が強く効いた音でインパクトに欠けるのが難点。ボーカルにもまたエコーが戻っている。
この音質ゆえに最大の魅力であるギターメロディが届きにくくなったように感じる。強靭かつ包容力すら感じさせるスケール感を持った前作であったが、本作は寒々しい雰囲気が強調された作品になっている。
残念ながらメロディアスさは減退したと言わざるを得ない。決して駄作ではないが一見さんには前作から手を付けることをお勧めする。
Unbound
![SARGEIST - Unbound](/img/article/sargeist_unbound.jpg)
- Psychosis Incarnate
- To Wander the Night's Eternal Path
- The Bosom of Wisdom and Madness
- Death's Empath
- Hunting Eyes
- Her Mouth Is an Open Grave
- Unbound
- Blessing of the Fire-Bearer
- Wake of the Compassionate
- Grail of the Pilgrim
フィンランドのブラックメタルバンド Sargeist の 5th『Unbound』をレビュー。2018年作品。
巷の評判が芳しくなく中々手を付けられなかった現行最新作。とはいえ、自分で評価してみない事にはわからないので意を決して購入。前作から Shatraug 以外のメンバーが一新。注目は Shatraug のギターの相方がアメリカ人、ブラックメタルバンド Demoncy のメンバーである。どういった繋がりだろうか。
Sargeist の作品としては物足りなさが残る作品である。基本路線はこれまでと変わりないが曲がつまらない。このバンドにしてはメロウ度が抑え気味。不明瞭なメロディラインのリフで気鬱な雰囲気物の曲が多い印象。前作『Feeding The Crawling Shadows』のタイトルトラックが持っていたようなアグレッシブながらも重い雰囲気の曲が目立つ。空間系エフェクトは前作よりは少なめで音自体はブ厚い。
激しく疾走しつつも哀切を絶やさずダイナミックに曲展開させていくのが Sargeist の魅力だが本作ではあまりメロディを活かせていない。特に前半はかなり辛い内容。曲調は意外と豊富でどちらかというと Horna の方が合いそう。後半はやや盛り返す。タイトルトラックの #7. "Unbound" と #8. "Blessing Of The Fire-Bearer" は Sargeist らしい哀感が炸裂する曲で捨ておくには勿体無い素晴らしさ。これだけでも聴いておこう。