ASAGRAUM Review
Potestas Magicum Diaboli
- Transformation
- Black Triangle Temple
- Leviathan
- Gospel of Ignition
- Daar waar ik sterf
- Black Sun Prayer
- Carried by Lucifer's Wings
- I Burn Within the Devil
オランダのブラックメタルバンド Asagraum の 1st『Potestas Magicum Diaboli』をレビュー。2017年リリース。
オランダとノルウェーの女性2人組ブラックメタルバンド。Draugur でも活動するオランダ人 Obscura が中心人物。
アルペジオを絡めた不吉なリフが耳にこびり付く。Mayhem など90年代初頭の北欧ブラックメタルをサイケデリックに味付けしたような音楽性。不気味な音使いが気色悪くてゾクゾクしてくる。初期 Horna + Inquisition + Deathspell Omega といった雰囲気。
クリアな音質ながら強烈な闇を発散。描写される陰惨な世界観には恐怖を覚える。ボーカルは若干エコーを効かせて喚き散らすスタイル。ギィィという唸るような声を聴かせたり芸達者。か細い体格の女性なのだが相当凶暴な声をしている。
ジリジリしたギターリフには明瞭なメロディは少ない。#4. "Gospel of Ignition" や #7. "Carried by Lucifer's Wings" で若干フィンランド風のメロディックリフが聴けるくらい。この2曲はアルバム中最もメロディアスな曲だろう。
ミドル〜ファストを繰り返しながら不穏なリフ使いで闇を描き出す昔気質なブラックメタルスタイル。それでいて古臭さは皆無。むしろサイケデリック感は新しい。唯一のオランダ語曲の #5. "Daar Waar Ik Sterf"(英訳:"Where I die")のリフの裏で鳴る低い音が怖すぎ。
8曲44分。あっさり聴き通せるが濃密な内容にお腹がいっぱい。脳みそが蕩けそうになる闇幻覚音源。
Dawn Of Infinite Fire
- They Crawl from the Broken Circle
- The Lightless Inferno
- Abomination's Altar
- Guahaihoque
- Dawn of Infinite Fire
- Dochters van de zwarte vlam
- Beyond the Black Vortex
- Hate of Satan's Hammer
- Waar ik ben komt de dood
オランダのブラックメタルバンド Asagraum の 2nd『Dawn of Infinite Fire』をレビュー。2019年リリース。本作からドラマーがオランダ人女性に変わっている。
前作『Potestas Magicum Diaboli』同様の濃厚ブラックメタル作品。新旧ブラックメタルの融合する様が素晴らし過ぎる。これは一級品である。前作から音楽性に大きな変化はない。音が分厚くなったせいかサイケデリック感は減退したが直情的に不吉さや恐怖が演出されるようになった。
前作より緩急激しくなった印象。特に後半の曲は落差が大きい大仰な曲が続く。ラスト曲の "Waar ik ben komt de dood" ではクリーンボーカルも使われている。邪悪な疾走から気が滅入るようなスローパートに展開して醸成されるねっとりとした不気味さは堪らなく気疎く無類の世界観。
今作ではメロディアスなリフも結構目立つ。硬質なリフで殺伐と疾走をしつつも明確なメロディを持つリフが良いアクセントになっている。#2. "The Lightless Inferno" や #5. "Dawn of Infinite Fire" で聴けるメロウリフを軸にした展開には胸が熱くなること不可避。
強烈な個性に圧倒された前作をも超える傑作!これは2019年のベスト盤になるかもしれない。
Veil Of Death, Ruptured
- Ignem Purificat Lilitu
- Fearless Dominance
- Opus ad Errantem
- De verloren tijd
- Impure Fire
- Veil of Death, Ruptured
- Opus ad Aeternum
- De waanzin roept mijn naam
オランダのブラックメタルバンド Asagraum の 3rd『Veil of Death, Ruptured』をレビュー。2023年リリース。
冒頭のひりつくようなリフと劇的展開が素晴らしい。極上の入りに期待が増し増しなオランダ産女性ブラックメタルバンドの3作目。
凶悪なボーカルや不気味さや陶酔感が混在するブラックメタルは健在。闇度高めな 1st、メロディアスな 2nd の中間を行く作風。
良い塩梅に熟成してきて音にメジャー感が出てきた印象。それでいて地下臭はしっかり音から滲み出てくる。音が洗練されすぎて気持ちが抜けてしまうバンドも多いのだが、ブラックメタルらしい毒気を保った本作は優れたバランス感。
流石に名作と呼ぶに相応しい前作と比較すると落ちるが本作も十分に楽しめる。#1. "Ignem Purificat Lilitu" と #6. "Veil of Death, Ruptured" が特に良い。ポストなんちゃらとか言われそうなフレーズがチラホラするがそっちには進まないで欲しいな〜。