THROUGH THE SPATIAL DIMENSIONS Review
Towards The Cold Void
- Chapter I
- Chapter II
- Chapter III
- Chapter IV
Through the Spatial Dimensions の EP『Towards the Cold Void』をレビュー。2017年リリース。
ロシアの2人組ブラックメタルバンド。元 Vaginal Juice という下品な名前のポルノ・グラインドバンドのメンバーによって結成。本作が初リリース作品。
音楽性は Belphegor を連想させるデス・ブラックメタル。ズブズブした泥濘むような重い刻みリフを織り交ぜたブラックメタルで短い曲の中で激しく展開を設けつつも猛然と駆け抜ける。ボーカルのゲロ声と終末観を漂わすメロディを伴うギターリフがかなり Belphegor っぽい。
4曲13分。全曲が3分台で疾走パート多めでさっと聴き通せるキャッチーな作品。本作の4曲は似たようなリフと展開が多いが曲ごとに違いを出せると面白いバンドになりそう。
経歴からもっと重量感を出しても良さそうなモンだが今の所、重さもメロディの扇情力も Belphegor には及ばない。フルアルバムに期待したい。
Through The Spatial Dimensions
- ...Under the Moonlight
- Somewhere Without Time
- Rites of Contempt
- Wisdom of Old Forest
- Flying Away into the Reign of Destiny
- In Dominion of Eternal Silence
- Tissues of the Shadows
ロシアのブラックメタルバンド Through the Spatial Dimensions の 1st『Through the Spatial Dimensions』をレビュー。2019年リリース。
デスメタル成分も多めだった前作EP『Towards The Cold Void』から作風が変化。本作では泥濘リフとボーカルのゲロ声をほぼ排除、甲高い声で喚き散らすボーカルで疾走一辺倒に攻める北欧ブラックメタル路線に一本化している。薄っぺらかった音質も大幅に改善されている。
ネクロな印象のあった前作から様変わりして非常に無機質な印象を受けるのが大きな違い。リードギターの音がやけにキンキンした音になっていてメロディを刻んではいるのだが無機質で無感情に響く。
それも例えば Hate Forest のような機械じみた轟然とした音像とは違う。デプレッシブ・ブラックメタルにも通じる人間的な無情さ厭世観を醸し出す音である。非常に個性的な音に変化していて面白い。
要所でロングトーンの叫びを聴かせるボーカルが強烈。#5. "Flying Away Into The Reign Of Destiny" ではなんと20秒以上続くロングトーンスクリームを聴かせてくれる。正確なブレスコントロールと強靭な喉に魂消た。
哀愁を漂わせつつも気重に響く #4. "Wisdom Of Old Forest" とシンフォニックな味付けで劇的な構成の #7. "Tissues Of The Shadows" がお気に入り。