HATE FOREST Review

ウクライナのブラックメタルバンド Hate Forest の デモ『Scythia』をレビュー。1999年リリース。レビューするのは Osmose Productions の2020年再発盤CD。ボーナストラックが1曲追加されている。

インスト曲が3曲、ブラックメタル曲4曲 + ボーナストラックという構成。追加曲は2002年『To Those Who Came Before Us』のタイトルトラック。オリジナルのデモを聴いたことがないので比較はできないが、リマスターされていて音質はフルアルバムと遜色ないレベル。

このデモの時点で Hate Forest 流プリミティブ・ブラックメタルが完成している事に驚かされる。無情に叩き込まれるドラムと荒々しいリフによる轟然とした音像に低い咆哮が載る。凡そ人間味の無い轟音は後年のフルアルバムの作風と殆ど変わらない。

音の無慈悲さはまだ徹底さに欠けるところがある。幾分か Mayhem や Immortal あたりの影響が感じ取れるのが興味深い。特に #4. "Shining Abyss" や #6. "Attila" では顕著。Carpe Tenebrum みたいな耽美な音色のキーボードも局所的に使用されている。

この再発盤で初めて聴いたが #8. "To Those Who Came Before Us" は重苦しさと美しさが一体となった素晴らしい曲。未聴の Hate Forest ファンは再発を期に入手必須な優良盤。

ウクライナのブラックメタルバンド Hate Forest の 5th『Hour of the Centaur』をレビュー。2020年リリース。レビューするのはCDデジパック盤。

2004年に解散した Hate forest が人知れず復活（筆者が知らなかっただけ）。いつのまにかフルアルバムまで作っていた。2005年『Sorrow』以来の復活作。

ファンだった方はご安心を。中身は Hate Forest 以外の何者でもない。無慈悲で轟然とした音像、無愛想な曲構成、Roman Saenko のデスボイスと何1つ変わっていない。

風景写真だけのブックレットも変わらず。すべて音で語る。本作は知的ぶった自撮りインスタグラム・ブラックメタル（笑）への嫌悪に塗れた簡潔で実直なブラックメタル作品との事だ。これで駄作なわけがない。

『Purity』以前の殺伐とした黒さを抑えて荒涼感を強調した音は前作『Sorrow』に近い。これまでとの違いを敢えて挙げると Drudkh を思わせるメロディ感が曲単位の個性が見出しにくかった点を多少改善しているところ。冷酷な音の中に暖かみを忍ばせるメロディは良い味付けになっている。

スケール感のある大作 #5. "Anxiously They Sleep in Tumuli" がお気に入り。1999年デモ『Scythia』以来の遊牧騎馬民族テーマも作風に合っていて○。ファンは元より、Hate Forest 入門盤としてもオススメできる作品。