SABBAT Review
目次
Envenom
- Bewitch
- The Sixth Candle
- Satan Bless You
- Evil Nations
- Devil Worship
- Reek of Cremation
- Deathtemptation (Kanashibari Part 2)
- King of Hell
- Eviler
- Carcassvoice
- Dead March
- Reminiscent Bells
- Satan Bless You (rough mix)
- Evil Nations (rough mix)
- King of Hell (rough mix)
日本のブラック・スラッシュメタルバンド Sabbat の 1st『Envenom』をレビュー。1991年リリース。レビューするのは Fallen-Angels Productions リリースの2016年再発盤。
Abigail、Sigh と並ぶ国産ブラックメタルの大御所バンド。スラッシュメタルを和風怪奇譚風趣で黒く塗りつぶしたようなブラック・スラッシュメタル。デモ時代の音楽性そのまま疾走曲中心の作風。唸るような低音歌唱が導入されて邪性を増した。闇芝居みたいな胡散臭い恐怖感のある作品。
とっつき難いアクの強さを感じないのは正統派な作りのためだろう。代表曲 #3. "Satan Bless You" を筆頭に名曲多数収録。#4. "Evil Nations"、#5. "Devil Worship" などバンドの濃い風貌に身構える必要皆無なキャッチーさ。
ボーナス追加された #13. "Satan Bless You (Rough Mix)" がより汚らしい仕上がりで素晴らしい。Sabbat の全作品中最高にブラックメタルらしい如何わしさに溢れる。国産ブラックメタルを代表する逸品。よってらっしゃい、みてらっしゃい、Sabbat の時間ダヨ。
Evoke
- Danse du Sabbat + Envenom into the Witch's Hole
- Godz of Satan
- Sabasius
- Total Necro...
- Torment in the Pentagram
- Beyond the River
- The Whisper of Demon
- Hellhouse (Kanashibari Part 3)
- The Curse of Phraoh
- Metalucifer and Evilucifer
- Satanic Rites + Curdle the Blood
- Poison Child
日本のブラック・スラッシュメタルバンド Sabbat の 2nd『Evoke』をレビュー。1992年リリース。レビューするのは Fallen-Angels Productions の2016年再発盤。87年EP『Born by Evil Blood』が追加収録されている。
ギターが Blind Witch の Temis Osmond に交代。前作の音楽性を引き継ぎつつも楽曲がより複雑化。緩急織り混ぜた大仰な曲展開でおどろおどろしく聴かせる2ndフルアルバム。この "おどろおどろしさ" がポイントで、今作はボーカル含め芝居がかった演出が本気度高。キャッチーさを抑えて強烈に忌まわしい世界観を醸成している。
わかりやすく疾走する曲が少なく即効性は前作『Envenom』の方が上だろう。ミドルテンポでじわじわと恐怖感を抱かせる和風ホラーらしい作り。スラッシーに疾走するパートもどこか怨念が付き纏うかのように重い。じっくり聴く事が要求される作り込まれた作風。本作から聴くとバンドの印象が良くないかもしれない。
唯一無二の世界観はさすが。前作以上にバンド名に相応しい音である。#1. "Danse Du Sabbat - Envenom Into The Witch's Hole" から #2. "Godz of Satan" への流れは絶品。
Disembody
- The Seven Crosses of Damnation
- Bird of Ill Omen
- Metamorphosis
- Diabolicaldom
- Unknown Massacra
- Evoke the Evil
- Satanas
- Reversed Bible
- Flower's Red
- Ghost in the Mirror
- Reversed Bible (live)
- Evoke the Evil (live)
日本のブラック・スラッシュメタルバンド Sabbat の 3rd『Disembody』をレビュー。1993年リリース。レビューするのは2014年の Iron Pegasus Records 再発リマスター盤。ライブトラックが2曲追加されている。裏面に記載されている "Hungarian Death No. 5" は実際には収録されていない。
おどろおどろしい雰囲気を重視した前作『Evoke』から軌道修正。曲のドラマ性を保ちつつも『Envenom』以前のストレートなスラッシュメタル路線に揺り戻しが起きている。キャッチーなリフとわかりやすい曲展開で突っ走るブラック・スラッシュメタル作品である。Sabbat はこうでないと。
本作では3者それぞれがボーカルを担う。これまで以上に低く唸るボーカルや高低音シャウトの掛け合いなどボーカルワークが派手。ギターがややモコモコした音で #6. "Evoke The Evil" などではデスメタルちっくなドロドロ感すら感じる。和風の怪しいメロディ使いのギターはより鮮明に。疾走曲は多いが物恐ろしい雰囲気は失われていない。
#1. "The Seven Crosses Of Damnation"、#6. "Evoke The Evil" が文句なしにカッコ良いスラッシュ曲。切迫感のあるリフと起伏の激しいリズムでドラマティックに聴かせる #8. "Reversed Bible" は Overkill シリーズが頭をよぎる名曲。
Fetishism
- Disembody to the Abyss
- In Satan We Trust
- Satan Is Beautiful
- Sausine
- Elixier de Vie
- Lost in the Grave
- Burn the Church
- Ghost Train
- The Exorcism (Kanashibari Part 5)
- Possessed the Room (Kanashibari)
- Sacrifice of Angel
- Crying in Last
日本のブラック・スラッシュメタルバンド Sabbat の 4th『Fetishism』をレビュー。レビューするのは2017年の Fallen-Angels Productions からの再発盤。ボーナストラックとして1990年EP『The Seven Deadly Sins』が追加収録されている。
Sabbat の作品としてはパッとしない 4th フルアルバム。『Evoke』同様に凝った展開で聴かせる作風。ミドルテンポの長めの曲が並ぶ。疾走曲は #1. "Disembody to the Abyss" と #6. "Lost in the Grave" くらい。それも中途半端な疾走感で覇気を感じない。イマイチ捉え所のない作品である。
土台はこれまでの Sabbat と変わらない。所々で洋風館みたいな雰囲気を感じさせるのは新しい所。#5. "Elixier de Vie" ではチェンバロの導入でスケールの大きな展開を聴かせる。勢いに欠ける内容だが個々の曲は悪くない。邪悪なスラッシュメタルが炸裂する初期音源のボーナストラックの方が本編より興奮する。
The Dwelling
- The Dwelling - The Melody of Death Mask
- The Dwelling - The Melody of Death Mask (live)
日本のブラック・スラッシュメタルバンド Sabbat の 5th『The Dwelling』をレビュー。レビューするのは2017年の Fallen-Angels Productions 盤。
Sabbat の魅力を詰め込んだ集大成的1曲60分の大作 5th フルアルバム。中身は部分ごとに取り出せばいつもの Sabbat。疾走パートの勢いは前作よりは遥かに上。これまでにもプログレッシブと言える複雑な曲があったので作り自体には驚きはない。だが、やはり単品の曲よりも大仰と言うか手間をかけた構成で和風旋律やキーボードを用いた怪奇風趣はこれまで以上。ゴシック・メタル的な美しさが映えるピアノとギターの絡みは素晴らしい。当然ながら非常に作り込まれたドラマティックな1曲。
難点は長い割には主旋律やリフレインがなくキャッチーさに欠けるところ。中々曲を覚えられない。集中して何度も聴き通すのは結構きつい。複数曲に分かれていればアルバム自体の印象は大分違っていただろうに。しかし、これだけ場面展開の激しい曲を1曲に纏めあげたのは流石。7分過ぎからの不気味なスローパートと30分頃の儚い雰囲気は堪らない。再発に伴って追加されたボーナストラックのライブ曲は蛇足。
Karisma
- 亡靈侍
- 大蛇
- 破流魔化貪
- 魔窟
- 御菊人形
- 妖蟲~日本的末世錄~
- 他界轉生 + 輪廻戾此
日本のブラック・スラッシュメタルバンド Sabbat の 6th『Karisma』をレビュー。レビューするのは2018年の Fallen-Angels Productions 盤。1998年の『Asian Halmageddon』EPをボーナス収録している。
出だしの #1. "亡靈侍" の衝撃が凄すぎて後の曲が耳に閊えてしまう。和を全面に押し出した 6th フルアルバム。曲名だけでなく歌詞も漢字で埋め尽くされている。何を歌っているのか不明どころか聴きながら歌詞を追う事も高難度。
かなりメロディアスで聴きやすい作品。ギターだけでなくボーカルラインもメロディアスな場面が多い。『Evoke』期みたいな怪しさに艶かしさが加味されたボーカルワークは今作の聴きどころ。攻撃性とメロディのバランスが非常に良い。前作『The Dwelling』をバラしたような作風。
曲の長尺化傾向は収まっておらず #4. "魔窟" が12分台、#3. "破流魔化貪" が9分台、#6. "妖蟲~日本的末世錄~" が8分。長尺の曲が多い。ストレートに突っ走る曲は #1. "亡靈侍" くらいだが通して聴くと疾走感が勝っていて結構あっさりと聴き通せる。ここ数作のような難解さは薄い。
Dissection ばりのリフ使いに鳥肌がたつ #1. "亡靈侍" は必聴の名曲。#4. "魔窟" も妖艶さ漂う劇的な曲で素晴らしい。#5. "御菊人形" がちょっと残念だがそれ以外はボーナストラックまで含めて聴き処満載。
Satanasword
- Charisma
- Angel of Destruction
- Kiss of Lilleth
- Death Zone
- The Gate
- Dracula
- Nekromantik
- Jealousy Carnage
日本のブラック・スラッシュメタルバンド Sabbat の 7th『Satanasword』をレビュー。レビューするのは2002年の Iron Pegasus Records 1000枚限定金色カバー盤。
前作『Karisma』は和様式をガッツリ押し出した内容だったが本作は和洋折衷。疾走曲を揃えて勢いよくスラッシュする前半。大仰な展開で聴かせる後半曲とメリハリの効いた構成になっている。
ツインリードやギターソロの妖艶なメロディが Sabbat らしさを主張。前作同様のメロディアスな内容。アクの強さはこれまでで最も薄いと思う。特に前半はベイエリア・スラッシュっぽくザクザク刻むリフの増量と滅多矢鱈に叫ぶボーカルで爽快にスラッシュメタルしている。
後半は Sabbat 流の劇的メタルが炸裂。#7. "Nekromantik" みたいな気持ちの悪い曲は Sabbat にしか作れない。大仰かつ重厚、芝居がかった歌と無茶な曲展開にハラハラさせられる。#8. "Jealousy Carnage" とは凄い曲名だ。
本作も初っ端の #1. "Charisma" のカッコ良さで一気に心を持っていかれる。前作以上に聴きやすく妖気と怒気のバランスが絶妙。バンドの理念はそのままに親しみやすい作風に進化した名作。
Karmagmassacre
- The Answer Is Hell
- I'm Your Satan
- Demonic Serenade / Brothers of Demons
- Plasmas Goat
- In League with Devils
- Black Magical Circle of Witches
- The Letter from Death
- Possession of the Reaper
- Satanasword
日本のブラック・スラッシュメタルバンド Sabbat の 8th『Karmagmassacre』をレビュー。2003年リリース。レビューするのは同年リリースの R.I.P. Records 盤。2018年の Thrashingfist Productions盤が買い直したくなるほどカッコ良い。
前作『Satanasword』以上にコンパクトでストレートにスラッシュする 8th フルアルバム。初っ端から気持ちよく突っ走る。ジャキジャキ感が強調されたギターリフはこれまで以上に豪快。
前のめり感はかなり強い。Sabbat らしい芝居じみた曲展開の曲は #7. "The Letter From Death" くらい。怪しい雰囲気は健在だが全体的にはアク抜きがより進んだ感じ。初期の音に内包していた暗黒面は薄まってきている。これを親しみやすさと取るか寂しく感じるかは聴き手の初期作品への思い入れ次第か。
リフがちょっとベタな気もするが疾走曲中心の内容は無心で楽しめる。名曲 "亡靈侍" を思い出させる #3. "Demonic Serenade/Brothers Of Demons" と奇怪なリフと甲高い声が Destruction みたいな #8. "Possession Of The Reaper" がお気に入り。#5. "In League With Devils" で先祖帰りしてるのは確信犯。
下の動画は Bone というデンマークのバンドがカバーした #3. "Demonic Serenade/Brothers Of Demons" のライブ映像。
Asian Demonslaught
- Mion's Hill
- Black Fire
- Satanic Rites
- Curdle the Blood
- Poison Child
- Welcome to Sabbat
- Crest of Satan
- Children of Hell
- Darkness and Evil
- Hellfire
- Immortality of the Soul
- Possessed the Room (Kanashibari Part 1)
- Sacrifice of Angel
- Crying in Last
日本のブラック・スラッシュメタルバンド Sabbat の『Asian Demonslaught』をレビュー。2009年リリースの初期音源集。レビューするのは2019年に Skol Records から再発されたCD盤。
Sabbat の極初期の音源をまとめたコンピレーション盤。こうして年代順にまとめてリリースしてもらえるとありがたい。というかこのバンドは Abigail 並みの音源リリース数で全ては追いきれない。名盤 1st『Envenom』への過程がよくわかる優良盤。インナーには当時の写真が沢山で作りも丁寧。収録された音源は以下。
- #1〜#2:1985年 7" Single『Sabbat』
- #3〜#5:1987年 7" Single『Born by Evil Blood』
- #6〜#9:1988年 7" Single『Desecration』
- #10〜#11:1989年 7" Single『The Devil's Sperm Is Cold』
- #12〜#14:1990年 7" Single『The Seven Deadly Sins』
Venom や Slayer、Sodom、Bathory などを土台に剽軽さとキャッチーさをも兼ね備えた穢らわしい Sabbat 流のブラック・スラッシュメタルは既に大方完成している。80年代中頃の我が国の地下世界にこんなバンドが棲息していた事に驚く。
『Envenom』で聴かせる Mercyful Fate に影響されたような芝居じみた雰囲気はまだ少ない。以降と比較すれば直球なスピード / スラッシュメタル。後半に行くに従って獰猛さが増していく。強烈なスラッシュリフで直情的に攻め立てる作風でスラッシャーには『Envenom』『Evoke』期よりこの頃の方がとっつきやすいかもしれない。おすすめ。
Sabbatrinity
- Black Metal Scythe
- Total Destruction
- Witchflight
- Witch Hammers
- Northern Satanism
- Root of Ultimate Evil
- Ravens Tell
- Witch's Torches - Version 2 -
- Karmagmassacre
- Witch's Weed
日本のブラック・スラッシュメタルバンド Sabbat の 9th『Sabbatrinity』をレビュー。2011年リリース。
近作の流れをくむスラッシュメタル路線。本作は当初から全曲速い曲にすると企図して作られたらしく実際その通りになっている。頭からケツまで Sabbat なブラッキング・スラッシュメタルの刺激的な内容。ただ速いだけでなく Sabbat らしい親しみやすさとドラマ性も兼ね備えているのは流石。
Gezol 本人も言うように確かにベタな部分もあるが些細な事。ベタ = 王道 = キャッチーと捉えるのが正解。速いは正義である。Venom は勿論だがドイツのスラッシュメタルバンド、とりわけ Sodom と Destruction のさりげない匂わせ方にはニヤっとする。
毎度のことながら冒頭曲のインパクト大で #1. "Black Metal Scythe" は名曲。#6. "Root Of Ultimate Evil"、#9. "Karmagmassacre" も最高。ギターが Damiazell に交代。ソロは Temis Osmond 程に派手でメロディアスではないが堅実なプレイを聴かせる。
前作から8年経っても1つ前のアルバム名を曲名にした曲が収録される伝統は変わらず。6th『Karisma』あたりからのアク抜きとスラッシュメタル純化の終着点となるか。