WRANG Review
Demo 2015
- Armia Krajowa
- Lofrede aan de vergankelijkheid
- Bestand in onbestand
- De deernis
- Morbide delirium
オランダのブラックメタルバンド Wrang のデモ『Demo 2015』をレビュー。2015年リリース。
デモと侮るなかれ。この時点で 1st『Domstad Swart Metael』と同じ路線のユトレヒト・ブラックメタルが完成している。5曲35分という構成も同じ。実質的にはフルアルバムと言える。仄かにメロウなブラックメタルリフにスラッシーな刻みを交えて複雑な曲を編んでいくのは『Domstad Swart Metael』と同じ。ボーカルは唸るようなシャウトでまだクリーンボーカルは使用していない。やや軽い感じがあるが音も悪くない。
#3. "Bestand in Onbestand" や #5. "Morbide Delirium" のような偏執狂的な単音リフや不規則なリズムは『Domstad Swart Metael』では聴けなかった。また都会的な雰囲気を醸すポスト・ブラックメタルっぽい箇所がちらほら。『Domstad Swart Metael』の方が激烈さでは上だがメロウさと曲のとっつきやすさではこのデモが上だと思う。『Domstad Swart Metael』のような激しすぎる曲展開が少ないので疲労感も低い。
後半が充実。#5. "Morbide Delirium" は病んだ出だしから様々色彩を変えながら展開する。激しくもせつないエンディングにはロマンティックが止まらない。入手は Bandcamp からどうぞ。
Domstad Swart Metael
- Domstad swart metael
- Tot dwalen verdomd
- Propaganda der afvalligen
- Stormend naar de nietigheid
- Heerser van niemandsland
Wrang の 1st『Domstad swart metael』をレビュー。オランダ ユトレヒトの3人組ブラックメタルバンド。2019年リリース。
黒地に白抜きのジャケット絵がカッコ良い。タイトルの Domstad は街の名前。タイトルは "ユトレヒトのブラックメタル" の意だろうか。地元への愛着を感じる。聴く前は濃厚なペイガン・ブラックメタルバンドだろうと推測していたが違った。
音楽性は攻撃的なギターを中心に据えて緩急激しく展開するブラックメタル。そこにメロディック・デスメタル風のギターフレーズやペイガンちっくなクリーンボーカルを味付け程度に絡めている。ギターは乾いた粗い音だが全体像はクリア、地味だがメロウなリフがそこかしこで聴ける。ボーカルが詠唱や喉を鳴らすような歌い方、無茶苦茶に喚き散らしたりと声や歌唱を様々に使い分けていて結構な曲者。
全体的に地味なのが難点。リフもメロディも訴求力が低く聴き終わった後に記憶に残らない。局所的に耳に留まる部分もあるが長尺の曲を通して聴かせる構築力は持っていない。ボーカルの頑張りでなんとか及第点に留まった感がある。
アルバム中最短の尺(5:42)の #4. "Stormend naar de nietigheid" はドカドカとしたデスメタリックなリフで走った後にメロディック・デス風に展開、エンディングに向けてメロディアスなブラックメタルリフに繋げる劇的な曲。この曲は本作の中でも卓越している。これぐらいの尺の曲を揃えた方が良い評価になりそう。