Këkht Aräkh Review

ウクライナのブラックメタルバンド Këkht Aräkh の 1st『Night & Love』をレビュー。2019年リリース。

ウクライナの1人ブラックメタルバンド。Darkthrone + Alcest。プリミティブ・ブラックメタルを詩的で夢見心地に仕立て上げた斬新な音楽性。数曲おきにフォーク、アンビエント風の曲を挟む。アコースティックギターと語るような唄い口の静の部分も多いが基本はあくまでブラックメタル。

古典的な疾走邪悪リフに絡む瑞々しい音のキーボードと侘しげなアコースティックギターがロマンティックな趣を演出。プリミティブ・ブラックメタルの型を崩さずに真逆の要素を絡ませた世界観は個性的で引き込まれる。

端端から自己陶酔感がプンプンする。儚くメロウなトレモロリフも素晴らしい。ナルシスト・ブラックメタルという新境地開拓なるか。

ウクライナのブラックメタルバンド Këkht Aräkh の 2nd『Pale Swordsman』をレビュー。2021年リリース。

1st『Night & Love』の夢見心地なブラックメタルは健在。単調で生々しいブラックメタルリフが静の部分を引き立てている。前作同様に内省的、前作以上に情緒的な逸品。

荒々しくもブラックメタル的な陰湿さや邪悪さは皆無。どこか人間味があって光の暖かさを感じる音世界は木漏れ日の下での惨劇といった趣。Genesis『Nursary Crime』を想わせる薄ら怖さを感じさせるのは前作との違い。

キーボードがリフに絡む頻度が減った故かブラックメタルリフはより剥き出しで粗っぽい。トレモロリフのメロディ感は前作同様にメロウ。ピアノの侘しげな雰囲気そのままに疾走ブラックメタルに移行する流れはかなり美味しい。

ピアノをバックに語るように歌う "Swordsman" は胸に迫る。なんとも侘しいアルバムの締めくくり方。重い物語性を感じさせるが全体で10曲30分とじっくり聴いても疲れない長さ。曲自体はシンプルだが全体の流れで独自の世界観を描く素晴らしい内容。